大阪都構想に関する有識者の声

※本ページの有識者の声は、本HPに掲載する旨ご了承いただいた有識者の皆様方の声を掲載させていただいております。

森裕之(財政学/都市経済学)立命館大学政策科学部教授

150301

※ 本新聞記事の紹介コメント『大阪都構想、立命館大学森教授の講演についての報道』より抜粋

「「都構想」については、様々な学者の皆様方が、大いなる疑義を呈しておられます。下記記事は、立命館大学の森教授の講演についての報道です。是非ご一読ください!

ちなみに当方、今、都構想に賛成の学者先生を探しているのですが、なかなか見当たらないのが実情です。地方行政、地方財政を勉強している方々の多くが、都構想に対して大変大きな疑念をもってらっしゃるからです。

もちろん、一般論として行政改革を推奨している著名な先生は多数おられるのですが、
「現在、投票にかけられようとしている都構想の設計図そのもの」
に対して強く賛成しておられる学者の先生方は、限られているように思います(おられましたら、是非、ご教示ください)。」

加茂利男(政治学/地方自治)立命館大学公共政策大学院公務研究科教授

政令指定都市は大阪だけでなく首都圏や中京圏にもある。全国で大阪だけが停滞していることを行政制度で説明できるのか。大阪の衰退は行政制度にあるのでなく、企業が東京や海外に移ったなど経済的な理由によるものとしか考えられない。病気の原因を間違えると、誤った薬を飲ませることになる

鶴田廣巳(商学)関西大学教授・大阪自治体問題研究所 前理事長・日本租税理論学会理事長

大阪都構想は集権化による大規模なインフラ整備が最大の目的。福祉行政は基礎自治体におしつけるが、財源なき分権であり、行政責任の転嫁に過ぎない。世論調査では、府民は大阪都構想について『説明不足だ』と感じながらも、なんとなく賛成している人も多い。

真山達志(行政学/公共政策)同志社大学副学長

真山達志同志社大学副学長ツイッターより(https://twitter.com/Twittatsushi

2012-07-03

  • 地方自治の基礎用語「民意」:国民、住民の総意という意味合いで、近年、多用されるようなった。しかし、そもそも把握可能な民意など存在するのかを含めて曖昧。大阪では、首長の選好、思いつきことを民意と解することがある。
  • 地方自治の基礎用語「地方自治法」:地方自治に関する最高かつ基本的法規。したがって、その改正については慎重かつ多面的な検討が求められる。大阪では、大阪都を実現できる内容なら何でも良いという大胆な考えがある。
  • 地方自治の基礎用語「危機管理」:自然災害、伝染病、事件・事故などから住民の生命と財産を守るために行う活動の総体。大阪では、首長が災害発生の危機をほったらかして、自分にとって不都合な事態に対してツイッターで言い訳をすることを指す場合がある。
  • 地方自治の基礎用語「特別区」:東京23区。区長、区議会議員は直接選挙で選ぶが、様々な点で不完全な基礎自治体(もどき)。大阪では、完全自治体をわざわざ不完全な自治体に変えようという斬新な発想があるらしい。
村上弘(行政学・地方自治)立命館大学法学部教授
大阪市廃止分割=大阪都構想について築かれてきた誤解
  1. 大阪府が「都」の名前になる。
  2. 大阪市は残り、ただ区の数が24から5になるだけ。
  3. 大阪市はなくなるが、その実体が5特別区に分かれて住民に近くなる。
  4. 大阪市は府と対立し、ムダばかりしている。

このうち1と2はウソだと知られつつありますが、3がまだ強く残る誤解です。しかし実は、政令指定都市・大阪という「豪華なケーキ」を5つに分けて、住民に配られるのは下のスポンジ部分だけで、クリームやフルーツは大阪府が吸い上げてしまいます。(そうしなければ「強い府」が作れない。)特別区は住民には近いが、都市を整備する力も、経済振興の力もなくなります。福祉・保健サービスなど以外は自分でできず、府と府知事に頭を下げるしかありません。その意味では、大阪市なき後の特別区は、中核市はもちろん一般の市よりも弱く、「格下げ」になるわけです。

4.は1990年代に(他の自治体と同じく)公共投資をやりすぎたのは事実ですが、橋下市長が諸施設を廃止し効率化したはずです。他方で、住民サービスとともに、中之島、天王寺、梅田南・北、大阪城公園など世界的水準に近いまちづくりを進め、USJや海遊館を誘致した市の努力も認めるべきで、この大阪市という強力なエンジンを都構想で廃止すれば、大阪は衰退するでしょう。

ところで、橋下大阪市長の発言を観察すると、1.2.はさすがに公式には明言されないようですが、「大阪都を実現しましょう」というスローガンを繰り返し、また「大阪市の廃止」という言葉をタブー(禁句)のように避けるので、1.2.の誤解を容認・惹起しようとしているようにさえ見えます。また、3.の「大阪市役所が皆さんの近くに来る」と、4.の「不幸せ=府市合わせ」がしばしば強調されます。それが観察ミスであり、市長が1〜3の誤解を解くような説明を繰り返してくださるなら、喜ばしいのですが。大阪市と選挙管理委員会も、住民投票に当たっては中立を守り、大阪都=大阪市廃止分割構想の正確な概要と賛否の意見を、文書で何度か広報するべきです。

おそらく、「大阪市廃止分割=大阪都構想」の概要をビジュアルに図示すると、下のようになります。これは根拠法や協定書にもとづく客観性の高い事実なので、賛成派にも反対派にも認めていただけるのではないでしょうか。(ただ、賛成派は「特別区は今の区と比べるかぎりでは、強い」とおっしゃるでしょうが。)こうした概要(定義)について説明し、さらに「大阪市を廃止しないと進まない政策は具体的に何なのか」(目的)、「大阪市の政策力と自治を廃止するデメリットをどう考えるか」を説明しないと、「大阪都は分からない」という声は止まないでしょう。

住民投票の望ましいあり方

(推進派の宣伝力には不足がないことを前提に、)

  1. 「大阪都=大阪市廃止分割構想」という中立的な表現が広がり、マスコミにも使ってほしい。
  2. それによって、大阪市の廃止というポイントも、知られ、考えられるようになること。
  3. 都構想が実現しても、名前としては大阪府は府のままで都にならない、という法規定が知られるようになること。
  4. 大阪市を廃止せずに二重行政の整理、区の自治拡大をする野党側の「対案」も、知られるようになること。
  5. 大阪都(大阪市廃止)を問う住民投票で、棄権するのは、市の廃止を認める意思表示だということが、知られるようになること。
  6. 賛否にぎやかに自由に議論して、投票率が上がること。

詳しくは、ウェブサイトで、
「大阪都構想=大阪市廃止分割構想と、住民投票」を参照
http://www.ritsumeilaw.jp/column/column201106.html

住友陽文(歴史学/近現代史)大阪府立大学教授

住友陽文大阪府立大学教授ツイッターより(https://twitter.com/akisumitomo)

2015-01-28

  • 藤井聡氏「今度の住民投票で問われているのは,この「大阪市を5つの特別区に分割すること」についての賛否」だと。つまり住民投票で問われるのは大阪都構想ではなく、大阪市解体へのイエスorノーなのだ。大阪都構想がどうなるかわからないのに、その前に大阪市解体に同意してくれと言われている。2015-01-28 13:40:22
  • 普通は旧システムから新システムに乗り換える時、新システムが安全であることを確認し、その場所を確保した上で旧システムを閉じる。しかし5月実施の大阪市住民投票では、新システムが確保できないのに旧システムをまず壊すことに同意せよと問うている。まるで住民は博打を強要されているかのようだ。2015-01-28 13:40:59

2015-02-08

  • 地方行政や地方自治の専門家から「大阪都構想」について何も批判がないというのは大嘘。この分野の業績のある大家はほとんどツイッターをされていないのをいいことに、そんな嘘がまかり通るのかもしれないが、彼らの多くは批判的だ。2015-02-08 21:12:53

2015-02-09

  • 橋下市長が藤井聡氏への「具体的反論」として言ったのは、「大阪市役所から大阪都庁へ一部の仕事が移る」ということだった。今度の住民投票では大阪に「都庁」はできない。そして「一部の仕事」以外は5つの特別区に分割される。何よりもこの「一部の仕事」というのは決して小さくないのではないか。2015-02-09 15:32:16
  • やはりどう見ても、今回の住民投票は大阪市解体へのYESかNOを問うものであって、「解体」というのは誇張でも何でもないと思う。大阪市は5つの特別区(通常の市町村より権限は少ない、今の区よりはキメが粗くなる)に分割され、その共有財産や権限はいくぶんかは大阪府に吸い上げられる。2015-02-09 15:33:08
  • 大阪市には市議会という市民の代表機関にして意思決定機関があったが、それが今度の住民投票でYESとなれば、無くなるわけだから、大阪市民の共同の意思は無くなる。まさに法人格を持った大阪市という団体は解体されるわけだ。どう考えてもそれ以外の言い方はない。2015-02-09 15:33:38
  • 住民投票の結果は大阪市民の意思の表明だから、その結果に大阪市民以外はとやかく言えないけど、大阪市民はちゃんと何を問われているのか理解すべきだ。こうやって市民としての意思を問われるのが、今度の住民投票で最後になるかもしれない。それがイヤなら、NOなんだ。2015-02-09 15:34:32
  • 大阪市解体(維新側曰く「大阪都構想」)に対する住民投票で、迷っている人は、とりあえず「いいえ」にするべきです。「変更」を選択したあとで後悔しても、後戻りできません。ならばいったん立ち止まることです。2015-02-09 17:53:30

2015-02-13

  • グラフのメモリをいじったのがこれですね。 RT @otouta 維新がまたトンデモなグラフを作った!と聞いたので探してみたらホンマに堂々と自分らのサイトにアップしてました。さっそく数字を拾って「正確な」グラフを作ったので、ぜひ見比べて pic.twitter.com/wdu4gpA6SV2015-02-13 17:17:33
  • 別に大阪府はバシバシ借金を返してない。国からの借金(臨時財政対策債)を増やして全体的にも借金増えてるね。しかしグラフのメモリをいじると臨財債以外の借金(「その他」)をバシバシ返してるように見える。2015-02-13 17:18:16
  • ちなみに先程のデタラメなグラフは、大阪維新の会のHPに堂々とアップされてます。 bit.ly/1D2G6tF2015-02-13 17:32:55
柴山桂太(人間・環境学研究科)京都大学大学院准教授

自治の長い歴史を持つ市を解体することで失われる経験の蓄積や、システムをまるごと設計し直すことによって生じる行政の混乱は、推進派が見積もっているよりもかなり大きいはずです。
»「大阪都」の暗然たる未来(三橋貴明の「新」日本経済新聞)

吉田央(経済統計学・環境経済学)東京農工大学准教授

大阪「都」構想※に関する「タウンミーティングパネル」が公開されていますが、この中に明らかにおかしなものがあります。

(1)以下のページのグラフでは、棒グラフの長さがメチャクチャです。たとえば一番右側を見ると、34,176よりも29,117の方がずっと長くなっています。
http://oneosaka.jp/pdf/panel/C-2.pdf

(2)以下のページのグラフでは、縦軸の間隔が 0 -500- 1000 - 1500の部分と1500 - 2000 - 2500 - 3000の部分でまるで違っています。
もちろんこれらの間隔はすべて同じ500ですので、メモリの間隔は等間隔にしないといけません。
また、このグラフには横軸の目盛りがありません。
さらに6本目の棒が57で7本目が90ですが、長さが違いすぎます。57から90は1.6倍弱ですが、このグラフでは4倍以上の差があります。
そもそもこのグラフで表されている数値は1316までなので、このグラフの1500以上の部分とそこに書かれている目立つ太い矢印は必要がありません。
http://oneosaka.jp/pdf/panel/ishin-finance-2.pdf

(3)以下のページの右側のグラフでも、縦軸の目盛りが0 - 0.2 - 0.4 - 0.6 - 0.8と、0.8 - 1.0 - 1.2で全く違っています。
いうまでもなく、これらは間隔がすべて0.2で同じですので、グラフを描くときには等間隔にしなければなりません。
http://oneosaka.jp/pdf/panel/B-3_shi_A-4_fu.pdf

(4)この地図では、千里中央が大阪市内であるかのように書かれています。
http://oneosaka.jp/pdf/panel/infra2.pdf

※名称は「大阪府」のまま変更されないので、「大阪都構想」という言葉自体が不適切だと考えます。

「都構想」に対する「東京都・23区関係者」の声

「現役区長」の声
インタビュー 東京都世田谷 保坂展人区長〜 都構想に賛成する区長の声など聞いたことがない〜
  • 『東京の都区制度は戦時下にできたもので歴史的な役割はほぼ終わっている。』
  • 『東京 23 区の区長の中で大阪都構想に賛成の声は聞いたこともない。』
大阪都構想の欠陥 東京23区の現実(保坂展人)
  • 『大阪都構想(中略)の議論を聞くたびに思うのは、東京の特別区の抱える現実と矛盾に対しての理解の薄さです。』
  • 『東京では、制約された基礎的自治体である特別区から「世田谷市」「新宿市」のようになることもたび たび話題にのぼってきました。それほど問題を抱えたシステムなのです。それだけに、大阪のように「政 令市を廃止して特別区へ」という議論には肯きがたいものがあります。』
「都政新報」の記者の声 〜『都構想の罠』より
  • 『東京都庁や二十三区の職員や議員には、こうした大阪の動きを冷ややかに見ている人が少なからずいま す。二〇〇〇年の都区制度改革やその前後の動きに関わったことのある人なら、この不合理な統治機構が いかに胡散臭いものかをよく知っているはずです。』
  • 『都区制度を一言でいえば、都が財政調整と事務分担の全権を握る制度です。...(中略)...都区制度そのも のが本来的に、都が区を統治するという性質の統治機構...(中略)...都政は戦時体制なのです』
  • 『都区制度の下にある特別区は...(中略)...決して一人前の自治体にはなれません。....(中略)...自分が使 うお金すら、都に財布のひもを握られている半人前の自治体です。』
  • 『十八年間、東京の都区制度を取材し続けてきた一人として、大阪で都区制度を導入しようとする試みは、 滑稽でしかなかった。』
「元東京都職員」の声 〜佐々木信夫氏(中京大学教授、元東京都庁職員、元大阪市特別顧問)
日経新聞 佐々木氏インタビュー(2011/12/11)
  • 「(大阪都都構想については)疑問点も多い。(中略)都になっても国から権限や財源が移るわけではない。 つまり、大阪というコップのなかで仕事を入れ替えるだけ。二重行政の無駄を省くとしても、3つを成り 立たせるためには、現在の大阪市の行政サービスの水準を下げて、財源を生み出すしか手はない」
  • 「都になれば成長するわけではない。東京が繁栄しているのは企業の本社機能が集まっているためで、都 制という自治制度とは関係ない。」
  • 「当時の東京府の人口の 92%は東京市に集中し、税収の 97%は東京市からあがっていたので、府と市の二 重行政の弊害がひどかった。今の大阪をみると、大阪市と堺市を併せた人口は府全体の4割に過ぎない」
『東京都政』(岩波新書・佐々木信夫著)
  • 「各区を大都市地域にふさわしい新しいタイプの基礎的な自治体として自立させる方向が、区の地方自治 にとっては望ましい。(中略)一つは二十三区を八つぐらいに再編し、それぞれを100万程度の政令指定 都市にする方向が考えられる」(P207)
  • 「制度上、区は特別地方公共団体という地位にとどまり、都区関係に集権的な構造が残っている。」(P206)
  • 「さらにいうと、この際、「東京市」の復活も構想すべきではないか。」(P208)

支持者の声