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(あと数時間) 「フライング敗北宣言」にご注意ください!

iRONNAに寄稿したものの、掲載取り下げとなった原稿です(経緯はこちらhttp://satoshi-fujii.com/150516-2/)。

ここに公表させていただきます。重要なメッセージを記載しています。是非、ご一読ください!

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【大阪都構想・橋下市長の2つの秘策?「フライング敗北宣言」&「ラストメッセージ」作戦】

京都大学大学院教授 藤井聡

5月17日の「大阪都構想」の住民投票がいよいよ目前に迫ってきました。今週は大阪のみならず、東京の各メディア各社も入り乱れての大論戦が繰り広げられています。こうなると言論空間ではかなり言説が荒れ、言葉遣いがずさんになってきます。例えば、ある報道(http://www.sankei.com/politi…/…/150509/plt1505090014-n1.html)では「(橋下市長が)賛成が上回った場合、平成29年4月の「大阪都」実現に伴う「都知事」には、「松井一郎大阪府知事がなるだろう」と述べ(た)」と報道されています。このタイトルを見れば、今回賛成派が勝てば、「大阪府」が「大阪都」に代わるかのような印象を持ってしまいます。が、実はそんなことはありません。そうなっても行政の仕組みが変わるだけで、名前は「大阪府」のままです。総務大臣がわざわざ自身のブログで丁寧に説明しておられるように、名前を変えるには別の法律改正と、また別の住民投票が必要になります。だから今回賛成派が勝っても「府民」は「都民」にはなれません(こちらの「メディアの誤報専門サイト」http://gohoo.org/15051101/をご覧ください)。
――というようなチョー基本的なところからして、十分に客観的な「事実」が周知されていないのですから、たくさんの大阪市の有権者が賛否について迷っているのが実情。つまり、現時点では浮動票がかなり残されています。
こんな状況で重要になる要素が二つあります。一つは「ムード」。もう一つは、投票するまさにその時に目にする「ラストメッセージ」。
そこに明確な意図があるか否か、それは筆者には分かりませんが、都構想を推進する橋下大阪市長はまさにこの二つに目を付けた手を打ってきている、と解釈することが不可能ではありません。ですから、投票まで一週間の時点では世論調査で「反対派がややリード」と言われていますが、簡単に覆される可能性が未だ十二分にあります。
まずは「ムード」について。橋下氏は昨年の衆議院選挙の投票日前日、演説で「完敗!もう負けを認めます」「努力を怠ったらこうなる」などと殊勝な発言を連発しつつ、フライングで敗北宣言を行っています。この演説が「神演説」などと言われ、「橋下さんを応援しようや!」という「ムード」が一気に広まり、大阪で大勝利を収めました。この顛末について、橋下氏は選挙後の記者会見で、それが「作戦」であったことを自ら明かし、とてもうまくいったと喜んでお話されています。ですから今回もこの「フライング敗北宣言」が行われる可能性は全く否定できません。
事実、市長はさながら布石を打つかの如く、「これが最後の投票だ」と宣言し、「負ければ政界を引退する」とほのめかしています。その上で投票日6日前の11日の市内の演説では、「非常にね、今苦しい状況」と言い「大阪都構想、反対で結構です」と「潔さげ」な言葉を口にした上で、「でも、反対した後、その先の大阪、何も未来はみえておりません!」と言い、万雷の拍手を浴びています。これはまさに二匹目のどじょうを狙った「フライング敗北宣言」の助走段階に入ったと見ることもできそうですよね。ついては投票日前日あたり、そんな宣言が飛び出すかどうか、是非、注目して参りましょう。
そして、判断付きかねている人が最後に頼るもう一つのものが「ラストメッセージ」。繰り返しますが、それが意図的なのかどうかは分かりませんが、もし意図的なのだとしたら、それは「賛成派」にとってはウルトラC級の荒技です。
今回の「都構想の住民投票」ですが、法律的には「大阪市を廃止し、特別区を設置することについての賛否」に関するもの。ところが、この基本中の基本の「法的事実」ですら、有権者に必ずしも十分に周知されていないのがこの住民投票の空恐ろしいところです。が、数日後に投票の今となってはそんなことも言ってられません。
ですから、有権者が目にする「ラストメッセ―ジ」として、投票用紙には「大阪市を廃止し、特別区を設置すること」というメッセージを記載し、それについての賛否を問うのが、最低限、必要です。
ところが!
実際に使われている投票用紙は「大阪市に『おける』、特別区の設置について」と書かれているのです。この違い、お分かりになりますか?つまり、今使われている投票用紙には、今回の投票の肝である「大阪市を廃止して」という情報が記載されておらず、さながら「大阪市をそのまま置いといて特別区をつくる」かのようにも読める文言になっているのです。
こりゃいくら何でもまずかろう……という事で、筆者は754人を対象とした心理実験を、このGW中に行ってみました。被験者の半数は、実際に使われている文言で賛否を問い、もう半分には「「大阪市を廃止し、特別区を設置する」と書いて賛否を問いました。
すると「大阪市を廃止して」という法律に明記された文言が入るか入らないかで、賛否の差は「5.2%」も変化することが分かったのです! もちろん、その方向は「大阪市を廃止」という言葉を抜いた現状の投票用紙を使うことで「賛成率が増える」という方向です。
これはつまり、「『大阪市を廃止して』というラストメッセージを隠ぺいした現在の投票用紙を使えば、実際の賛否の割合よりも(反対を基準にして)5%も賛成が増える!」という事を意味しています(この分析結果は、今学術論文として準備中です。まとまりましたら、追って公表する予定です)。
いやぁ、このラストメッセージ作戦は、もしそれが「作戦」だとしたら、すさまじい威力です。どんな言論活動や街宣活動やっても、それとは無関係にこの投票用紙に仕掛けられた最後の「罠」で5%もひっくり返すことができるわけですから。
今、賛否の割合で反対がややリード、という報道が出されていますが、この「ラストメッセージ作戦」が炸裂すれば、一瞬で逆転されることだってありそうです。なんと言っても、ラストメッセージで判断が大きく変わるのは、心理学では「フレーミング効果」と言われる極めて頑健かつ強烈な(そして不条理な)効果なのですから――。
ただしこの効果を乗り越えることは不可能ではありません。「この投票は、大阪市を『つぶす』かどうかを問うものだ」という事実をしっかり皆が認識しさえすれば、そんなフレーミング効果は最小化できます。その周知が、ここ数日でできるかどうかが「適正な事実に基づく理性的判断」を実現するためには是が非でも必要だと言えるでしょう。
さて、5月17日まで後少し。(意図的が否かはさておき)以上に述べた「フライング敗北宣言」「ラストメッセージ作戦」が炸裂し、賛成派が勝つのでしょうか?それとも、そういう心理バイアスの影響を全て乗り越え、「理性」に基づく合理的な判断が下されるのでしょうか?その結果が出るまで、ホントにあと少し。
大阪市の有権者の皆様はもちろんのこと、日本全国の方々も是非、賛否がどうなるか以前に「心理操作や心理詐術のような要素ではなく、理性に基づく判断が下されるかどうか」に、最大限の注意を払って、当日をお迎えいただきたいと思います。
以上、本稿が有権者と公衆の皆様方の理性的判断に貢献することを祈念しつつ、終えたいと思います。ありがとうございました!

PS:都構想について詳しい事を知りたい方は是非、こちらのHPをご覧ください。あらゆる分野からの106名もの学者からの都構想に対する「徹底的なダメ出し」所見はじめ、さまざまな動画・論説等が掲載されています。http://satoshi-fujii.com/