新日本経済新聞2015年11月10日

橋下・維新政治は悪質な「ブラック・デモクラシー」である。

京都大学大学院教授 藤井聡

多くの現代人は、デモクラシー=民主主義といえば、まずは「善いもの」であって、「悪いもの」だとは微塵も思っていないようです。

しかし、デモクラシーが「平然と上手なウソをつく」悪質な詐欺師のような政治家と交われば、それは瞬く間に邪悪で真っ黒「ブラック」なものへと変質してしまいます。

なぜなら、「平然と上手なウソをつく」政治家なら、彼こそが他の政治家をさしおいてデモクラシー=民主主義によって、リーダーに選ばれ、人々を豊かにする全うな政治が全て停止され、デマとテロルに塗れたおぞましい民主政治、

「ブラック・デモクラシー」

が始まってしまうからです。

ブラック・デモクラシーとは、何が正しいとか善いのかといった議論の全てを度外視し、邪悪で悪質な政治を、単なる「数の力」でもってごり押ししていく邪悪な政治です。

彼らは「数の力」で全てを押し切るために、「多数決至上主義」を標榜します。

そして、理性的な議論を全て度外視し、デマとウソと詭弁に塗れた「プロパガンダ」を繰り返し、徹底的な「世論工作」「多数派工作」を仕掛けます。

さらには、反対論者を、自らが持つ公権力を駆使して徹底的に「封殺」「弾圧」します。それはまさに「テロル」です。

こうした「テロル」と「プロパガンダ」でもって多数派を形成し、(彼らの党利党略にとっては有益なものの、世間の利益を大きく損ねる)邪悪な政策を推し進めていく──これが、ブラック・デモクラシーです。

その典型例は、言うまでも無く史上最悪の独裁者と目されているヒトラーが展開した「デモクラシー」ですが、それはもちろん別名「全体主義」と呼ばれるものです。つまりブラックデ・モクラシーとは、民主主義の衣をまとった真っ黒な「全体主義」政治の事を言うのです。

筆者はこの度、中野さん、適菜さん、薬師院さん、湯浅さんとの5名で、そんな「ブラック・デモクラシー」を様々な角度から徹底的に論ずる書籍、

『ブラック・デモクラシー ~民主主義の罠』
http://www.amazon.co.jp/dp/4794968213

を編纂、出版いたしました。

この書籍では、民主主義をめぐる政治学、政治哲学に関する議論と、ブラック・デモクラシーの具体例をとりまとめています。

本書の中でその具体例として取り上げたものこそ、大阪の「橋下・維新政治」です。

筆者は橋下・維新政治は、ブラック・デモクラシーの最も分かりやすい典型的事例であることを、学者として確信しています。

そもそも、ブラックデモクラシーとは、先にも紹介したように、

(1)「多数決至上主義」
(2)デマとウソと詭弁の塗れた「プロパガンダ」
(3)公権力を駆使した言論弾圧(=「テロル」)

の三要素を含むデモクラシーですが、橋下・維新政治の中にはこの三要素が濃密に見いだせるのです。

まず、第一の多数決至上主義は、橋下・維新政治に明白に見いだせます。

そもそも、橋下氏は住民投票で都構想が否決された夜、その記者会見の席上で、

「僕が提案した大阪都構想、市民のみなさまに受け入れられなかったということで、やっぱり間違ってたということになるのでしょうね。」「民主主義という政治体制は本当に素晴らしいですね。」

と発言しています。つまり彼は、政策の客観的是非すら、多数決で決められるという立場に立っている程の、多数決至上主義者なのです。

同様に彼は、投票前には、次のようにつぶやいています。

「大阪都構想は大阪の将来を左右する。だから住民投票で住民に決めてもらう。議会が否決するような話ではない。」「住民投票で住民に決めてもらう。議会が否決するような話ではない。住民が判断する。」「最後に住民投票。みなさん、政治家が決めれることには限界がある。」

これで彼を多数決至上主義者と呼ばないのなら、多数決至上主義者などこの世にはいない、ということになってしまうでしょう。

では、第二のデマとウソと詭弁に塗れた「プロパガンダ」ですが、これもまた、彼らの政治の中に数多く見出すことができます。

例えば橋下・維新らは、今年の5・17に都構想が否決された住民投票で「ラストチャンス」「ワンチャンス」と賛成票を煽りに煽りまくっていたにも関わらず、この度、再挑戦を、その舌の根も乾かない内に言いだしました。これは、いわゆる、

「閉店セール詐欺」

そのものです。しかも、その際には、テレビCMやチラシの全戸配布等に政党交付金が原資とみられる数億円もの大金がつぎ込まれていたわけですから、これもまた、これを「ウソと詭弁に塗れたプロパガンダ」と言わずして一体何が「ウソと詭弁に塗れたプロパガンダ」なのか──といわざるを得ない代物であることが分かります。

なお、これ以外にも実に数多くのウソとデマに塗れた以下のような詭弁とプロパガンダが繰り返されている疑義が濃厚なのですが───これについては下記原稿にてご確認ください。

【「負ければ即引退マッチ」詐欺】
【「おおさか」は大阪じゃないんだよ詐欺】
【臨時党大会で解党したよ詐欺】
【お金は全て国に返すよ詐欺】
【僕って法律の専門家なんだよ詐欺】
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2015/11/03/fujii-168/

つまり橋下維新政治は、「ウソと詭弁に塗れたプロパガンダ」の宝庫であると言わざるを得ない──それが筆者の明確な確信です。

では第三番目の「公権力を駆使した言論弾圧」についてでありますが──これもまた、多言を弄するまでも無く、橋下・維新政治で繰り返されていることは、明々白々です。

「自分達に批判的な論者を『TVに出演させるな』という圧力をかける文書を、公党名義でTV局に送りつける。」
http://satoshi-fujii.com/150504-4/
http://satoshi-fujii.com/150426-3/

「自分達に批判的な論者を雇っている大学の総長に、彼を雇っていることそれ自身を問題視する文書を、公党名義で送りつける。」
「放送を所管する総務大臣に、自分達に批判的な論者を出演させているTV局を問題視する国会質問を、公党国会議員が行う。」
「大学行政を所管する文部科学大臣に、自分達に批判的な論者を雇っている大学を問題視する国会質問を、公党国会議員が行う」
http://satoshi-fujii.com/pressure/

「自分たちに批判的な論者の私信を入手し、それを公開すると同時に、その論者がTVに出演することを法的根拠が薄弱なままに問題視する公党名義のBPO申し立てを行う」
http://satoshi-fujii.com/shinnihon2-151020/

つまり彼らは、「自分達に批判的な論者」を黙らせるためなら、公党の権力や大阪市長の社会的影響力等を駆使しつつ、「私信の公開」といった違法である疑義が濃厚な行為まで行いながら、論者個人や、論者個人が出演するTV局や勤務する大学、さらにはそれらを所管する政府に対して国会の権威まで使いながら、徹底的な圧力をかけ続けたわけです。

これらの詳細は、上記HPか著書『ブラック・デモクラシー』の当方の章で、詳しくその証拠物件と共に論じていますが、これらを踏まえれば、橋下維新政治において、公権力に基づく「言論封殺」「言論弾圧」という「テロル」が行われていると考えざるを得ません。

・・・

つまり橋下・維新政治は、「とにかく多数決は素晴らしいということにしておいて、自説を広めるための徹底的なデマとウソと詭弁を駆使したプロパガンダを通して多数派工作を図ると同時に、反対論者を黙らせるためのテロル(弾圧、封殺)を、市長や公党の権限を駆使して徹底的に仕掛け、それを通して党利党略を追及し続けてきた」、疑義が濃厚なわけです。

ここまで豊富な証拠がある以上、橋下維新政治こそが悪質なブラック・デモクラシーの典型例なのだと断定せざるを得ないと筆者は考えます。

この様なブラック・デモクラシーが大阪の地で続けられれば、大阪はますます疲弊し、凋落していく他ありません。

しかしこの問題は、大阪にのみ止まる話ではありません。今後の展開によっては、橋下・維新政治が中央政治権力と結びつき、ブラック・デモクラシーが日本のど真ん中で本格的に駆動することも十二分に想像できるのが、現状です。

そうなったとき、わが国日本は修復しがたい巨大被害を被ることとなる──筆者は政治哲学的な見地から考えて、そう強く懸念しています。

こうした筆者の懸念が現実のものとなるか否かは、11月22日の大阪ダブル選挙の結果に、大きく依存しています。

この度の大阪ダブル選挙では、こうした「大局」的な視野に収めた、賢明なる有権者判断が下されんことを、心から祈念したいと思います。

PS
『ブラック・デモクラシー』の神髄を是非、ご賞味ください!
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