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ポピュリズム政治のくだらなさと恐ろしさを的確に描写した映画「ボブ★ロバーツ」のご紹介

宮崎哲也さんから、今回の一連の都構想騒動の際に「ボブロバーツ」という映画をご紹介いただいていたのですが、この度ようやく拝見することができました。

事前に宮崎さんからは 『「小泉フィーヴァー」も「橋下ブーム」もすべてこの映画が主題とする政治現象の範囲内にある、といっても過言ではない』 とも伺っていましたが(下記、映画評論、ご参照ください)、まさに(!)な内容。

ポピュリズム政治のくだらなさと恐ろしさが、的確に描写されています。

「『ボブ★ロバーツ』というアメリカ映画がある。『ショーシャンクの空に』で知られる名優ティム・ロビンスが脚本を書き、監督し、自ら主演した一九九二年の映画だ。
 私はずっとこの映画を“現代ポピュリズムの教科書”として事あるごとに薦めてきたのだが、あまり注目されない。ちゃんとDVDも出ているので(Blu-rayディスクも発売して欲しい!)、この際だから紹介しようと思う。「小泉フィーヴァー」も「橋下ブーム」もすべてこの映画が主題とする政治現象の範囲内にある、といっても過言ではないからだ。
 ボブ・ロバーツというのはロビンス演じる主人公の名前。ペンシルヴェニア州上院議員選に出馬した新人候補者だ。
 ボブはまずフォーク歌手として名を馳せた。彼の演奏する歌は、曲こそ素朴なカントリー調だが、歌詞は冷徹なリバタリアンそのもの。「怠け者の貧乏人は不平ばかりを託ち、自活しようとしない。彼らは、額に汗し知恵を絞って金を稼いでいる私達働き者を嫉み、平然と搾取し、寄生している……」といった内容ばかりだ。だが、これが大当たりした。大衆はボブが自分たちの“本音”を代弁してくれたと感じたのだ。
 この成功をきっかけとしてボブ・ロバーツの身辺に、いかにもメディア受けしそうなエピソードが配置されていく。実は一日で大金を動かす投資家であり、かつフェンシングの名手だとか。ホームレス生活のどん底から身を起こした奇跡の成功者にしてドラッグ撲滅に挺身する社会運動の指導者だとか……。
 そして彼は反戦運動や公民権運動、カウンターカルチャーが盛んだった一九六〇年代を堕落の時代といい切り、「アメリカを取り戻せ!」をスローガンに政界への転身を狙う。マスメディアの寵児からワシントンDCの覇者への第一歩を踏み出そうとしているのだ。
 映画はモキュメンタリー(擬似ドキュメンタリー)の手法を使って、ボブ・ロバーツの実像に迫る姿勢をみせる。ところが映像にはボブの片々たる言容や時々の感情の発露が映し出されるばかりで、彼がいかなる人間なのか、最後の最後までよくわからない。また彼の背後に渦巻くスキャンダルや謀略の疑惑も盛り込まれるが、真相は藪の中で終わる。結局「ボブ・ロバーツとは誰なのか」の答えは観る者がそれぞれに出すしかない。
 しかし、この得体の知れなさこそが現代ポピュリズムの得体なのだ。
 ・・(中略)・・
 しかも、この映画はボブ・ロバーツ的なるものに反対するリベラルな人々の駄目さも仮借なく描き出している。とにかくヒステリックで独善的なのだ。「六〇年代はよかった」という時代認識に立て籠もり、これを批判する者に対しては、嫌悪と軽蔑と反感が先立つことを隠さない。これでは他者を説得できない。
 結果として、彼らが打ち鳴らす警鐘の音は、新しいリーダーへの喝采と歓呼の前に掻き消されてしまう。」

……「新しいリーダーへの喝采と歓呼の前に掻き消されてしまう。」いわゆる西部スクールの先輩(!?)でもあります宮崎さんのこの表現、本当によく分かりますねw 決してこうならないように、大局を見据えながら「対峙」し続けなければなりませんね。

本映画、是非、一度、ご試聴ください。

以上、ご紹介まで!