2015.04.08
近代政治史のご紹介~アメリカ地方政治における「独裁」~
今まで指摘してこなかったポイントですが、実は、中央政府と異なり、地方政府においては、日本国内外問わず、
「独裁」
が生じやすいのです。中央の政治よりも地方の方が政治的権限が一極に集中しているからです。
下記東谷さんの記事では、1930年代、激しい不況に苛まれていたアメリカのルイジアナで、「州の政治を牛耳り、ほとんど私物化した人物」である「ロング氏」が紹介されています。
(※ 2011年に産経に掲載された記事です。例えば、
http://www.asyura2.com/12/senkyo128/msg/288.html
でも、その文書が保存されています)
ロング氏は、
「彼は子だくさんの農民の子として生まれ、高校中退後にセールスマンとなったが、一念発起して短期間で弁護士資格を取得して活躍」
したそうです。そしてその後、
「刺激的な演説で支持者を増やし、ルイジアナ州知事に就任すると、またたく間に同州を支配」
していったとのこと。彼の政治手法は、
「政敵たちを既得権者とくくって口汚く攻撃する」
というもので、しかも、
「ニューオーリンズ市を中心とする富裕勢力に対しては、州法を改変し重税を課して貧しい州民の溜飲(りゅういん)を下げさせ、彼らが喜ぶ政策を乱発して支持層を広げた。」
そうです。そしてそんな政策の狙いは、東谷さん曰く
「単に敵を設定して大衆の熱狂を背景に敵を倒し、さらなる権力を手にすることにつきた。」
とのことですから、彼は、大衆迎合主義、ポピュリズムの権化の様な地方政府の首長だったわけですね。そして彼は挙げ句の果てに、
「反対派をたたくため新聞を規制」
という、(どこかで見聞きしたような?)振る舞いもしておられたとのこと。
時代や洋の東西を問わず「民主主義」であれば、こういう極めて危険な政治家が、とりわけ、
「地方政治」
において生まれてきてしまうのは、不可避なのかもしれません。
なお、その後、ロング氏はどうなったかというと、
「知事の後継者に腹心を指名して、自らは上院議員にくら替えして中央政界に乗り出す。米民主党内でも急速に勢力を拡大して、F・ルーズベルト大統領の地位を脅かすまでにいたった。」
とのことで、挙句には
「米連邦政府とも対立するようになり、ルーズベルトは連邦軍を入れてルイジアナを制圧することすら考えた。」
という水準に至ったとのことです。ただし、
「ところがある日、ロングは不慮の死を遂げて彼のルイジアナ王国は崩壊してしまう。その後、ロングの無法な独裁が暴かれ「アメリカン・ファシズム」と呼ばれたが、支持者たちは彼に投票したことを頑(かたく)なに正当化し続けたといわれる。」
こういう「無法な独裁」「ファシズム」と呼ばれるような恐ろしい政治がもう二度と、自由主義国家において幅を利かさないようになることを、祈念せずにはおれません。
以上、一片の近代政治史のご紹介でした。