新日本経済新聞2015年10月6日

「おおさか維新の会」という新しい「詐欺」疑惑
~「おおさか」は「大阪」ではないそうです。ご注意を~

京都大学大学院教授 藤井聡

橋下大阪市長は、

「大阪の再生と、『大阪都構想』をしっかり掲げた政党をもう一度作る必要がある」

ということで、新党「おおさか維新の会」を立ち上げるそうです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151001/k10010255281000.html

今週は、この「おおさか維新の会」の立ち上げ問題について、いくつか理性的なコメントを冷静に差し上げたいと思います。

(1)「おおさか維新の会」の「おおさか」は「大阪」ではありません(新手の詐欺にご注意を)
http://satoshi-fujii.com/150918/

まず最初に、「おおさか維新の会」という名称が、なぜ選定されたのかを、今日の政治的状況を踏まえつつ、実践政治学的な解説をいたしたいと思います。

そもそも、11月の大阪府知事、大阪市長選挙で、「橋下維新」側が擁立する候補が敗退すれば、彼らは政治活動のベースを失うことになります。したがって彼らの政治活動にとって、そのダブル選挙は自らの生き残りをかけた極めて重要な戦いになります。

これまで彼らは「都構想」を軸に戦いを組み立ててきましたが、5月の住民投票で否決された今となっては、その看板一枚では、厳しい戦いになることが予期されます。

したがって、選挙を有利に進めるためには、彼らには別の看板が是が非でも必要になります。

そこで考案されたと考えられるのが、彼らがこの政局の中で立ち上げることになった

「国政政党」

の名称に

「おおさか」

を入れるという手口です。

(なお、橋下氏は、「これからはですね、大阪府知事選挙、大阪市長選挙のダブル選挙もありますし、(…中略…)もう一度本物の維新をつくる必要があります」と、この新党の立ち上げが「ダブル選狙い」の意味を担っていることを明言しています
http://blogos.com/article/137243/ )

例えば、当方が彼らの立場なら、例えば次のようなメッセージを発するでしょう。

「これだけの人数を要した、地域の名前の入った国政政党は、
日本の歴史始まって以来!
この政党を通して、日本の政治のど真ん中、国会と連携していきながら、
僕たちは、本気で大阪をよくしていきます!
新しい地方と中央の関係をつくるためにも、僕たちに力を下さい!」  (※1)

こうして、有権者達にアピールし、(大阪ダブル選などの)大阪ローカルの選挙を勝ち抜こう、とするわけです。

しかし、こんなしらじらしぃメッセージはありません。

はっきりいって、この手のメッセージは

「ウソ」

です。なぜなら、国会という場はそもそも、地方議会じゃないのであって、特定地域のみでなく、日本の国全体について考えなければならないからです。

実際、橋下氏は、そういうツッコミが入れられることを懸念して、9月16日の記者会見では、次のように説明しています。

「この『おおさか』は、地名を示すのではなく、大阪でやってきた改革の実績を示すものだ。改革の精神を受け継ぐ政党としての名称だ」と述べました。」(※2)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150916/k10010236391000.html
http://hope.2ch.net/test/read.cgi/seijinewsplus/1442355954/

つまり、この「おおさか」は「大阪」の事じゃないんです!

だから!!

これから(※1)の様な雰囲気のメッセージを見聞きしたら、即座に、(※2)の言質を取り出して、

「あっ、やっぱウソうそついた!
このおおさかってのは、大阪じゃないんでしょ!!」

と言って、皆でウソツキを徹底的に「嘲笑」してやりましょう!

(2)橋下氏は10月1日に、「おおさか」を巡る新手の詐欺疑惑を早速実行しました。

……というような事を、当方のHPで、9月18日に

「「おおさか維新の会」の「おおさか」は「大阪」じゃないそうです。ご注意ください~【9.18詐欺注意報】」
http://satoshi-fujii.com/150918/

と指摘していたのですが、この予想は、あっという間に「的中」してしまいました(!)。

橋下氏は、10月1日に正式に「おおさか維新の会」の結党の記者会見を行い、次のように発言したのです。

「東京とは違うこの地域の名称を入れた政党をつくって……」
http://blogos.com/article/137243/

よろしいでしょうか? 彼はここで、「おおさか」というのは「この地域の名称」、つまり(彼が以前言っていた、大阪での改革の業績ではない文字通りの)「大阪」だと、改めて宣言したのです!

9月16日からわずか二週間余り後の10月1日に、しかも、その新党結成の記者会見の席上でいきなり、前言を翻した訳です。

しかも、松井氏は10月1日付けの日経インタビューで「地域政党を今あえて国政政党にする必要性はあるのか」という質問に対して、

「地方の課題を解決するとき、中央で一定のパワーを持たないとできない。国政政党としてのポジションをつくるのは当然の話だ」
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS30H7X_Q5A930C1PP8000/

と、さっそく、上記(※1)と同趣旨のメッセージを発しています。この発言は、「大阪の課題」を解決するために「おおさか維新の会」のパワーを活用すると言っている訳で、これぞまさに「おおさか=大阪」を前提とした(※1)のメッセージと軌を一にしています。

つまり彼らは、国政政党に地方名が入っているのはいかがなものか、というツッコミに対しては、(9月16日の記者会見のように)

「おおさか」は地名でない、「大阪でやってきた改革の実績を示す」んです。
この国政政党で、大阪でやってきた改革をさらに日本中で進めます!

と言い、(例えば、大阪の有権者達等に対して等の)別の文脈では(10月1日の記者会見の様に)

「おおさか」は、実はこの地域の名称(=大阪)のことであって、
この国政政党のパワーをつかって大阪をよくしていきます!

と、言っている訳です。

これこそ、極めてオーソドックスな

「二枚舌」

であって、最も典型的なウソであり、「詐欺」(※3)の手口だと解釈せざるを得ません。

(※3 ちなみに、「詐欺」とは「他人をだまして錯誤におとしいれ、財物などをだましとったり、瑕疵ある意思表示をさせたりする行為(広辞苑)」です。この場合、だましとろうとしているのは、選挙における「賛成票」、あるいは選挙の勝利で得られる「政治的地位」ということになります)

(3) 橋下氏の「おおさか維新の会」の趣旨説明を信じるのはバカです。
http://satoshi-fujii.com/151002-2/

ただし、上記の「おおさか」を巡る二枚舌の問題以前に、そもそも彼らは、先日の都構想の住民投票が「最後のチャンス」と言い、

http://oneosaka.jp/tokoso/

投票で否決された時には、大阪都構想は「間違っていた」と言っていた、
http://www.sankei.com/photo/story/news/150517/sty1505170018-n1.html

という事を忘れてはなりません。

このことはつまり、彼らは「最後のチャンス」とウソをつき、「間違っていた」という言葉そのものもウソだった、というわけです。

ならば、一体どこのだれが、「大阪の再生と、『大阪都構想』をしっかり掲げた政党をもう一度作る必要がある」という、新党立ち上げの趣旨についての橋下氏発言が、

「嘘ではない、誠実な言葉」

だと信用できるのでしょうか?

それを信用するのは、バカ以外にありえないのではないでしょうか?

詐欺にはめられそうになって、ギリギリ逃れられた数か月後に、またその詐欺師が別の商品持って「これいいですよ、へへへ」ってやってきた時、その言葉を信じるのは、バカ以外の何者なのでしょうか?

「今回の橋下氏の発言を信用するのはバカじゃないんだ!」ってことを、理性的に説明できる人間がいたら、是非、教えてください。

是非とも、よろしくお願いいたします。
(※ もちろん、詐欺師まがいの詭弁は願い下げですが)

……ということで以上、「おおさか維新の会」を諸言説を確認すれば、それが「政策実現のため」というよりも、彼らが政治的地位を確保するためだけの「道具」にしか過ぎないのか、という疑念が明確に浮かび上がってくるわけです。

つまり、橋下維新は、

「おおさか維新の会」

という一見、地方政党っぽい名称を付けた、国政政党を立ち上げ、大阪ローカルのダブル選挙を勝ち抜く、という(「大阪都構想」に次ぐ)、

「新しいタイプの詐欺の手口」

を案出したのではないか、と解釈できるのです。

なんと言っても、その「綱領」は、住民投票で否定された都構想を(かつ否決されたら二度と再挑戦はしないと何度も言明していたものを)復活させるものであり、

それと同時に、都構想とは真逆の理念である道州制の推進を謳いあげるものであり、政策的妥当性はほとんど見いだせない代物なのです(なお、政策論については、綱領が確定した段階で改めて解説したいと思います)。

そうした点も加味すれば、「おおさか維新の会」を立ち上げるのは「政策実現」でなく、「大阪W選で勝利するための党利党略だ」というミカタは、相当程度信憑性が高いと言わざるを得ないと、筆者は考えます。

もちろん、最終的なご判断は読者各位にお任せいたしますが、本稿の解説が、皆様の適切な政治的判断を促しますことを、祈念したいと思います。

(注:以上の見解は全て筆者個人の見解であり、如何なる組織・団体の見解とも異なります)