『大阪都構想』の危険性に関する学者所見(抜粋コメント)

(5月9日現在、計108人分)

「大阪都構想」、すなわち「特別区設置協定書」に基づく大阪市の廃止と五分割については、大阪市民の暮らしや都市の在り方に直結する様々な「危険性」が、行政学、政治学、法律学、社会学、地方財政学、都市経済学、都市計画学等、様々な学術領域の研究者から数多く指摘されている。

しかしながら、マスメディアではそうした「危険性」についてはほとんど論じられておらず、イメージ論が先行した議論が繰り返されている。このままでは、大阪市の廃止・分割という不可逆的な決定を迫られる住民投票において、大阪市民が適正な判断を行うことが著しく困難であることが強く危惧される。今求められているのは、危険性、リスクを明らかにしたインフォームドコンセントなのである。

こうした実情を鑑み、大阪市民が理性的判断を下す支援を行うことを企図して、「都構想」が大阪市民の暮らしや大都市大阪そのものに及ぼす「危険性」を様々な視点から明らかにしている学者達から、その具体的内容についての所見を、呼びかけ人(京都大学藤井聡教授・立命館大学森裕之教授)から公募したところ、4月27日から僅か一週間で124名から所見供出意向の申し出があった。そして現在(5月9日現在)、108名から所見が供出された。

以下、その108名の学者からの所見から抜粋したコメントを、項目ごとに紹介する。

地方自治論(行政サービス論)

「大阪市を分割し、権限・財源を大阪府に吸収すれば、大阪市民への生活サービスの低下は避けられない。高寄昇三 (甲南大学・名誉教授) 財政学・行政学

「都構想」は大阪市を解体し市民へのサービスを低下させるものでしかありません。財源の多くが大阪府に吸い上げられ、その使い道を市民が決めることはできません。碇山 洋 (金沢大学・教授) 財政学

「大阪都構想は、住民サービスを著しく低下させかねない地域切り捨てです。」 上園昌武 (島根大学・教授) 環境経済学

きめ細やかな施策で地域住民の暮らしに寄り添い、地域の環境を守るためには自治体の規模は小さい方がいいと私は考えています。大阪市を解体し五つの特別区を設置するという「都構想」なるものは私の考えとは相反します。青山政利 (近畿大学・名誉教授) 環境学・エネルギー学

「これは大阪府への集中・集権であり、隷属への道である。縮小された権限と財源の下で、特別区は団体自治も住民自治も発揮することができず、特別区間での財政調整をめぐる争いと、住民間での負担増または歳出減の押し付け合いに終始することとなろう。」梅原英治 (大阪経済大学・教授) 財政学

「「介護保険制度」ば、5区がつくる一部事務組合に移され、窓口も担当職員も見えにくくなる。…(中略)…高齢化社会で求められる介護、医療、福祉を統合した「地域包括ケア」からは遠ざかる一方となるに違いない。当然医療費を下げることはますます困難になる。それが若い世代の負担をより重くすることが強く危惧される。」澤井 勝 (奈良女子大学・名誉教授) 財政学

「都構想では、いかにお金を儲けるかのみがうたわれ、広域な区になる結果住民へのサービスが低下し、介護など福祉も低下します。田結庄良昭 (神戸大学・名誉教授) 地質学

「「都構想」は市民社会の基盤を弱体化させる。自治は制限され、安全、医療、福祉、生活環境の水準は低下し、公営住宅入居も一層困難になろう。政令指定都市である大阪市の廃止は、市民の暮らしを損なうことになる。」 早川和男 (神戸大学・名誉教授) 環境都市計画

「(国民健康保険事業は)一部事務組合によって運営されることになれば、これまでと比べて住民の要求は反映されにくくなり、地域医療が後退する可能性が懸念されます。」藤井えりの (岐阜経済大学・専任講師)地方財政学

「住民の声は行政に届きにくくなり、「住みづらさ」が蔓延する失望の都市に変わってしまうでしょう。保母武彦 (島根大学・名誉教授) 財政学・地方財政学

「行財政運営は混乱し、地域住民生活への深刻な影響、しわ寄せが懸念される。」山田 明 (名古屋市立大学・名誉教授) 地方財政学

「新たに設置される財政調整資金の配分をめぐり府と特別区および特別区相互の間で、絶えざる紛争が生まれる可能性があります。このため、大阪市民が現在享受している市民サービスが解体され、特別区の間で格差が発生し、低下してしまうことを危惧します。」横田 茂 (関西大学・名誉教授) 地方財政学

自治喪失論

「一見、民主的な印象を与える住民投票でカモフラージュしているが、今の大阪市の状況は、手続的にも内容的にも民主主義と地方自治の危機である。」真山達志 (同志社大学・教授) 行政学

「「大阪都構想」…(中略)…その本質は、市民の命と暮らしの砦である大阪市の解体にあります。」宮入興一 (愛知大学・名誉教授) 地方財政学

「大阪都構想は、大阪市の解体に他ならない。大阪市は自治権を失い、大阪府によって直接統治される。都市計画決定をはじめ、多くの権限を大阪府に吸い上げられる。こんなものが地方自治の伸長に役立つはずはない。」 山口二郎 (法政大学・教授) 政治学

「大阪市における住民自治を崩し、住民から行政を遠ざける大阪都構想には強く懸念を抱かざるをえません。」関 耕平 (島根大学・准教授) 財政学

「橋下・維新の会のもとでは、災害対策は重視されず、予算は削減されてきました。「都構想」でも、災害対策や教育・医療・福祉などの住民サービスを削り、大阪市民から吸い上げた財源をカジノや大型開発に投じようとしています。…(中略)…歴史と伝統をもつ大阪市を廃止する特別区の設置には重大な問題があるといわざるをえません。山崎文徳 (立命館大学・准教授) 技術論

大阪都構想は、経済成長という目的のために、大阪市民の政府である大阪市を解体して、市民のいのちと暮らしのための税金を成長戦略のために使うものであり、憲法の保障する住民自治と団体自治を侵害するものである。村上 博 (広島修道大学・教授) 行政法学

地方自治論(衰退論)

「大阪市は126年の歩みのなかで形成された有機的総合行政体。市を解体し、5特別区と前例のないマンモス一部事務組合に分割することは生木を裂くに等しく、大都市の活力をそぎ、長期低迷を生む木村 收 (阪南大学・元教授) 地方財政学

「大阪市は戦前の名市長関一のもとで都市行政の先進的な事例を数多く生み出し、都市基盤の整備や環境政策、文化行政などの分野で全国の都市の手本となる成果を挙げました。…(中略)…大阪の再生は、こうした先例にこそ学ぶべきであり、都市の解体によって再生を果たすことは決してできないでしょう。鶴田廣巳 (関西大学・教授) 財政学

「「大阪都構想」が通れば、大阪市民は共同体としての大阪市を失うとともに、共同体がもつ大都市行財政権限を失うことになる。その損失は計り知れない。平岡和久 (立命館大学・教授) 地方財政学

大阪地域は京都市や神戸市に比べて都市力や都市格ははるかに低いものになるであろう。」 宮本憲一 (元滋賀大学・学長/大阪市立大学・名誉教授) 財政学・都市経済学

「大阪都構想は、財源の低減により都市機能を低下させ、大阪市の発展と市民の暮らしを困難にするものだ。」 山口英昌 (元大阪市立大学大学院・教授/元美作大学大学大学院・教授) 食環境科学

地方自治論(都区制度論)

集権的な体制をつくるため、東京府・東京市が廃されて東京都・特別区がつくられた歴史的経緯を忘れるわけにはいかない。」荒井文昭  (首都大学東京・教授) 教育学

もともと東京都の特別区制は、憲法の「法の下の平等」原則に反する疑いがあり、現実にも、多摩地域(30市町村)、島嶼各町村との間に無視できない格差が生じていて、特別区間の格差もまた深刻である。こうした現実の下で、…(中略)…なぜ「都」になりたいのか、全く理解できない。」 池上洋通 (千葉大学・元非常勤講師) 地方自治論

「新たに設置される「特別区」は憲法上の地方公共団体とは解されておらず、その制度的な根拠は立法政策に委ねられることになり、その存在は不安定なものであると言わざるを得ません。」今井良幸 (中京大学・准教授) 憲法・地方自治法

特別区になったその日から自治権拡充の闘いが始まることを覚悟しなければならない。」 今村都南雄 (中央大学・名誉教授) 行政学

「今回の都構想では都(知事)への集権的体制を作り上げることになり、分権の流れに逆行する。」入江容子 (愛知大学・教授) 行政学・地方自治論

大阪都になって、住民のための自治は拡大しません。東京都23区の多くは、数十万の人口を擁しているのに、市ではなく自治を大幅に制限されているのです。紙野健二 (名古屋大学・教授) 行政法

「大阪都」という行財政制度をつくれば、東京都に匹敵する経済力・行財政力になるというのは本末転倒した錯覚としか言いようがない。」 遠藤宏一 (大阪市立大学・名誉教授) 財政学・地方財政論、地域政策論

「東京都は大規模すぎて、自治の実体を持たない「非自治体」です。だから法律上の「都民」はいても、地方自治の担い手たる「自治体民」はいません。市民・住民のいないところに市民自治・住民自治は存在しません。東京都制はすでに失敗しているのです。白藤博行 (専修大学・教授) 行政法

特別区という制度は、東京の特別区自身が切に抜け出したいと思っている最悪の制度です。菅原敏夫 (法政大学・元非常勤講師) 地方財政学

(都区制度は)「本質的には中央集権化の手段として案出されたものであり、地方分権に資するという議論は、理論上は考えられても現実的なものではありません。」竹永三男 (島根大学・名誉教授) 歴史学

府の役割が重要なのは、市町村による活動を支援しまた調整することにあり、決して市町村に取って代わることではありません。槌田 洋 (前日本福祉大学・教授) 地域経済学・地方財政学

「今回大阪市を解体し、あらたに5つの特別区を設置しようとする動きは市民自治を拡充することを目指すことを目的とせず、むしろ後退の虞がある。それというのも「解体」は大阪市の持っていた権限や財源の府への集中を進める一方で、やせ細った特別区をつくることになるからである。」 西寺雅也 (名古屋学院大学・教授(元多治見市長)) 自治体経営学

「「大阪都構想」は「大阪市」をリストラして、中身のはっきりしない「特別区への格下げ」という"粗悪品"である。」堀 雅晴 (立命館大学・教授) 行政学

地方自治論(政治哲学論)

大阪市廃止構想の本質的な瑕疵は、『自治』の問題であるにもかかわらず、徹底的に『効率』の問題として語られていることです。市民の自治権と効率的な行政サービスの交換取り引きに応じようとする人たちは、一度放棄した自治権はもう回復できないことを忘れています。」内田 樹 (神戸女学院大学・名誉教授) 現代思想

「住民として市による「都構想」説明会に参加した。住民は「行政サービスの消費者」…(中略)…というのが市長の「住民自治」であった。自治体としての形はもちろんだが、住民も「消費者」に成り下がってしまってよいのかという問いが突きつけられている。 栗本裕見 (大阪市立大学・特別研究員) 政治学

「市の廃止は「大阪市」という一つの社会有機体の「死」を意味し、柳田国男が徹底批判した「家殺し」に他ならない。」 藤井 聡 (京都大学大学院・教授) 公共政策論、国土・都市計画

橋下政治の最大の罪は、同じ大阪人の間に内部対立を煽り立てたことにある。以前の大阪は、支持政党や思想信条の違いがどうであれ、もっと人情味に溢れた街であった。だが、今の大阪には刺々しい相互対立が蔓延している。…(中略)…真の「One Osaka」は、役所や行政の形式ではなく、人々の心の中で実現すべきものなのである。薬師院仁志 (帝塚山学院大学・教授) 社会学

私には「失うものは確実だが、得られるものは全く不確実」な改革の典型だと思えてなりません。(柴山桂太 京都大学准教授 経済思想・現代社会論)

政治学プロセス論

「市民の疑問を解消し,質の高い市民意思の表明のための条件となるべき住民説明会は,「催眠商法」と揶揄されるほど,賛成誘導に偏した,法の規定にある「わかりやすい説明」とはほど遠い内容のものとなっている。柏原 誠 (大阪経済大学・准教授) 政治学・地方自治

橋下徹氏が詐欺的なセリフやグラフを使い続けていることも大問題です。」北山俊哉 (関西学院大学・教授) 行政学・地方自治論

政治家の取り引きの結果、歴史ある大阪市が消滅し、財源も権限も奪われた特別区へと解体される。そしてその結果、大阪市民が築き上げてきた財産が次々と切り売りされ、行政サービスも著しく低下する。そんなことを許して良いのでしょうか。」冨田宏治 (関西学院大学・教授) 政治学

「最後に特定公政治権力がこうした危険性についての議論を隠蔽し、弾圧したままに、特定の政治的意図の下、直接住民投票でそれを強烈に推進しようとしている。つまり、それはその中身も推進手続きも論外中の論外の代物なのである。」藤井 聡 (京都大学大学院・教授) 公共政策論、国土・都市計画

「書店に並ぶ本は、大阪都反対が圧倒的に多い。不思議なことに、橋下氏以外の維新の党の政治家は、討論会に出席しない。つまり、橋下氏の弁舌だけが、大阪都構想を支えているのだ。…(中略)…一方的でウソが多く、疑ってみるべきだ。(民主党政権や安倍政権を批判してきたマスコミや東京の学者が、大阪都に対して弱腰なのは、大阪都の複雑さと、異論には橋下氏や維新が「個人攻撃」するという異例のメカニズムとによるのだろう。)」村上 弘 (立命館大学・教授) 行政学・地方自治論

「民主主義は理念であり手続きです。「都構想」についての民の声はどのように形成されてきたのかが見えていません。」 岩﨑裕保 (帝塚山学院大学・非常勤講師) 教育学

制度を変えれば、政策が良くなるわけではけっしてない。議論をして手間ひまをかける民主主義を大切にして「大阪」の生活と文化と街を発展させる点からも、大阪市を廃止・解体する「大阪都構想」には重大な問題があります。」水谷利亮 (下関市立大学・教授) 行政学・地方自治論

「自治体政策論の立場で考えれば、今回の大阪都構想はズサンな制度設計案といわざるをえず、その政策意思決定プロセスにおいても『いいことづくめの情報操作』『異論封じ込めの政治』が行われました。」大矢野修 (龍谷大学・教授) 自治体政策論

「政治学的に分析するなら、大阪都構想とは、思い付きに過ぎない政策を否定された維新の会が、これを実現するために、権力と財源を府に、そして一人の知事に集中すること目指したものである。これを進めてきた手続きは、行政学・政治学的に考えて適正なものではなかったし、行われた説明は願望とまやかしに基づくものであった。」  木谷晋市 (関西大学・教授) 行政学・政治学

「橋下徹氏の政策づくりの特徴は...(中略)...調査の軽視です。よい政策づくりに調査は欠かすことはできません。いわゆる「大阪都」構想にも調査不足の拙速さばかりが目立ちます。提供される情報は、客観的なデータではなく、根拠の乏しい期待や願望がほとんどです。これではうまくいってもラッキーヒット、普通はしくじると危惧されます。 窪田好男 (京都府立大学・准教授) 公共政策学

大阪の地方自治の歴史において、とりかえしのつかない愚挙とならないことを祈っている。重森 曉 (大阪経済大学・名誉教授) 地方財政学

「これら一連の橋下市長の行為は、彼の民主主義への無理解と傲慢さの表れであり、そのこと自体も「都構想」なる大阪市解体構想の危険性の証しである。この危険な政策に向けて、「不誠実な扇動」によって人々が動員されていく状況を深刻に憂慮しています。」下地真樹 (阪南大学・准教授) 経済学

成熟した民主主義においては「手順」が非常に重要です。…(中略)…しかし今回はあまりに自作自演の勝手な順序であり、さらには「無理やり法定協を手中におさめる」「予算と恫喝をちらつかせて各方面を誘導していこうとする」など、いずれも実に悪質な手口であると感じました。」釈 徹宗 (相愛大学・教授) 宗教学

「唯一の根拠であった「二重行政解消」の虚構性が明らかとなったにも関わらず,改革者のイメージのみを強調して具体的内容を語ろうとせず,市民に判断材料を与えないまま選択を強いる手法は「戦後民主主義の危機」と言わざるをえない。」 杉本通百則 (立命館大学・准教授) 環境論

「この投票にはいくつかの無視できない前提が欠如している。一つ、大阪市の廃止など、「改革」の域を越えた事柄が問われているのに、それが十分伝えられていないこと。一つ、大阪府や大阪市をめぐる問題点についての現状認識が共有されないまま「二重行政の解消」という虚構が先行し、その議論に乗らない者は「対案を示せない」と切って捨てられる議論が横行していて、民主的に議論を進める上できわめて不公正な状況にあること。」 住友陽文 (大阪府立大学・教授) 歴史学

大阪市民に是非を判断する材料が、提供されていないことに憤りを感じます。アンフェアでかつ虚構に満ちた説明を繰り返す手法の危険性は、映画『独裁者』でチャップリンが伝えたかったことではないでしょうか。」 長友薫輝 (三重短期大学・教授) 社会福祉学

「移行にともなう莫大なコストだけははっきりしているにもかかわらず、「構想」が実現した場合の住民にたいする「効果」はきわめてあいまいです。政策の体をなしているとは到底言えません。」森原康仁 (三重大学・准教授) 経済学

権力者に対する学説からの批判の自由は守られなければならず、国会質問で取り上げるなどして圧力をかけるというのは、天皇機関説事件の例を持ち出すまでもなく民主主義を機能不全に陥らせる。井出 明 (追手門学院大学・准教授) 観光学

大坂府・大阪市自身の問題であると同時に、日本の民主主義にとっての重大事態と痛感します。晴山一穂(専修大学・教授) 行政法

過剰改革・効率化論

いつの頃からか「改革」やら「変革」やらが安易に使われ、何かをぶっ壊すことが正義であるかのように語られ始めました。…(中略)…皆さんもっと冷静になってください。急激に変化に人間は耐えられません。変える前に立ち止まってよく考えることは極めて重要です。急激な変化の向こうには破綻しかありません。神谷章生 (札幌学院大学・教授) 政治学

財政効果のみを考慮する統合は、地域で営々と築かれてきた知的財産、伝統、文化を壊し、市民や府民の利益にかなうものとは思えません。」 高森康彦 (大阪府立大学・名誉教授) 生物学

「「大阪都」の首長が描く成長戦略を強権的に進めることを可能にし、産業はもとより教育や文化活動にいたるまで、成果主義で煽りたてる競争社会を目指すものである。これでは自然環境どころか社会環境をも破壊しかねず、大阪をリスク都市に陥れると危惧される。」 西川榮一 (神戸商船大学・名誉教授) 工学

長年築き上げてきた科学や文化の蓄積、生活のあり方などが、「合理化」や「効率」の名のもとに切り捨てられるのではないかとの危惧を抱きます。あまりにも「効率追求」に走る事は社会を活性化させる事にはならないでしょう。」 和田幸子 (神戸市外国語大学・元教授) 国際経済論

二重行政論

「大阪府と大阪市の二重行政が税金のムダづかいを生むというのが、「維新の会」が「大阪都構想」を主張する最大の根拠になっています。しかし、その主張には根拠がありません。鶴田廣巳 (関西大学・教授) 財政学

「道府県と政令市とのいわゆる「二重行政」については、多くの場合ほとんど問題になっていないことから、そもそも政令市を解体する理由にはならない。」平岡和久 (立命館大学・教授) 地方財政学

「大阪府市は特別区になった場合の財政シミュレーションを示しているが、再編効果には大阪市の事業の民営化(地下鉄・バスや一般廃棄物事業など)や「市政改革プラン」など、「大阪都構想」による二重行政の解消とは関係のないものが意図的に盛り込まれている。それらを差し引けば、純粋な再編効果は単年度でせいぜい2~3億円程度しかなく、その一方で「大阪都構想」によって初期費用600億円、ランニング費用20億円/年が必要となり、財政的に大きな赤字の発生が懸念される。」森 裕之 (立命館大学・教授) 地方財政学

「二重行政が「大阪」をダメにした。これが大阪維新の主張のひとつ…(中略)…本当にそうでしょうか。…(中略)…機会すら"無用"という考え方には重大な問題がはらまれています。井上千一 (大阪人間科学大学・教授) 経営学

「広域行政を担う大阪府と基礎的自治体である市町村は、それぞれの役割と視点から行政を行っているので、「二重行政」が無駄とは一概には言えないのです。どうすればよりよい大阪を展望できるのか、その答は大阪市の廃止にあると結論する根拠を見出すことはできません。」 高山 新 (大阪教育大学・教授) 財政学

漠然としたイメージだけの二重行政批判にもとづいてリストラの発想による商工行政・支援機関の一元化が図られる場合、企業支援の水準が低下する恐れがある。」 本多哲夫 (大阪市立大学・教授) 地域経営論・中小企業論

経済・産業政策論

「「大阪都構想」は、住民の意思にもとづき住民の福祉向上をめざす自治組織を解体し、「大企業が潤えば、いまに住民も潤う」という破綻済みのトリクルダウン論にしがみついて、大企業奉仕の広域地方経営体をつくろうとするものでしかありません。」石川康宏 (神戸女学院大学・教授) 経済学

地域経済学の視点からみると、むしろ大阪経済のさらなる衰退を招くといわざるをえません。…(中略)…今必要なのは、現在の大阪市や区の行財政権限と住民自治機能を強めて、大阪経済の圧倒的部分を担っている中小企業群の再投資力を高めることで、主権者である住民の福祉の向上を図ることです。」岡田知弘 (京都大学・教授) 地域経済学

大阪経済の再生には、大阪市がこれまでの経済産業開発政策の総括と調査、研究を行い、社会のニーズと取り組みを発掘し、サポートするような都市経済政策とその実行が必要なのであって、大阪市を廃止し、大阪府に一体化したからできるものではない。西堀喜久夫 (愛知大学・教授) 地方財政学

「今、これ(中小企業)を支援する産業政策、住民主体の福祉の街、緑豊かで子供が育つ街、つまりすこやか大阪が求められる、これが発展の方向だ。そのためには、住民に近い大阪市の区を活性化することだ。カジノなどはバブルの後遺症だ、決して、都への集権ではない。」北野正一 (兵庫県立大学・名誉教授) 経済学・経済政策論

都構想にとって唯一の地域政策であるカジノ(賭博場)誘致は、「公共の福祉に反しない」という要件を充たさないばかりでなく、それ自体、決して儲かる商売ではないことが明らかになっています。桜田照雄 (阪南大学・教授) 経営財務論

「住民投票にかけられる大阪市廃止・解体構想については、(大阪都構想の)理念とは全くの別物であり、また、制度疲労が言われている特別区による方法が、大阪の景気浮揚につながるとは思えません。東京には、益々水をあけられるだけでしょう。」道野真弘 (近畿大学・教授) 商法・会社法

「連綿と続く歴史的資産としての商店街が、「大阪都構想」によって一瞬にして解体されることによって、人々の生き生きとした生活が失われることになってしまうのではないかと強く懸念します。」中西大輔 (岐阜経済大学・専任講師) 流通経済論

「カジノ構想などの大型開発に依拠した成長戦略ではなく,大阪の中小企業の技術力を活かした大阪経済の活性化を目指すべきである。」 永島 昂 (立命館大学・准教授) 日本経済論

「大阪維新の会」が大阪府政、大阪市政を牛耳る中、府市の中小企業政策は大きく後退しました。府レベルで「商業関連予算」が2007年度17億円であったものが2014年度にはほぼ3分の1の6億円に削減されました。 八幡一秀 (中央大学・教授) 中小企業論

大阪都構想の経済成長戦略には、大阪経済や中小企業の活性化をもたらす根拠が示されているようには思えません。 田中幹大(立命館大学准教授) 中小企業論

民営化論

水道は、最も公共性が高い地域独占のライフラインであり、住民は選択不可能である。…(中略)…公営が良く民営はだめと決めつけるのは早計である。…(中略)…大阪市が解体されて無くなると、必然的に大阪市水道局もなくなり、民営化される。」中村寿子 (阪南大学・非常勤講師) 水環境学

東京では都が直営している地下鉄、バス、水道について、なぜか大阪都構想では民営化するとしている。東京で民営化の予定はない。」西村 弥 (明治大学・准教授) 行政学、公共政策学

「大阪都構想のもとで行われる市民のセーフティネットでもある「保育園」などの民営化は,住民サービスの低下につながることが必至であり,これは行政の責任放棄と言えるのではないだろうか。」 野口義直 (摂南大学・准教授) 経済学

国土・都市計画論

「大阪都構想では、大阪市を廃止し、現区役所を出張所に変え、従来型まちづくりの延長であるカジノ誘致、高速道路などのインフラ整備を進めようとしている。このような大阪都構想では大阪の活性化は望めず、破綻への道を歩むことになるだろう。」中山 徹 (奈良女子大学・教授) 都市計画学

「いま大阪に必要なのは分権型のまちづくりであり、大阪都(府)に一元化された巨大プロジェクト中心主義の集権型都市計画ではない。大阪市24行政区に都市計画権限を委譲し、市民の生活空間を住民主体のまちづくりで充実させることこそが、大阪の「都市の品格=都市格」を取り戻す道である。」広原盛明 (京都府立大学・元学長) 都市計画

「いま大阪に求められているのは、庶民の暮らしを守り、伝統を守り、未来を展望できる都市計画ではないでしょうか。」宗川吉汪 (京都工芸繊維大学・名誉教授) 生命科学

大阪市という大きな活力を携えた共同体の解体で、それによって支えられていた大阪、関西、そして日本の活力と強靱性が毀損し、大きく国益が損なわれる。藤井 聡 (京都大学大学院・教授) 公共政策論、国土・都市計画

大阪の長期衰退の原因は,西日本における中心性の低下,国土の双眼構造の崩壊に他ならない.府と市をくっつけて都を名乗ればそれで解決できるようなレベルではない構造的な問題が既に発生して(いる)。首都圏と関西圏では新幹線をはじめとする広域交通インフラの差が歴然としており,これが西日本における中心性を失っている主因である」波床正敏 (大阪産業大学・教授) 交通計画、国土・都市計画

大阪市が分割されると、政令指定都市という保護枠組みの中で大阪市が維持してきたまちづくりの力が大きく損なわれることになります。福田健太郎 (近畿大学・准教授) 法律学

防災論

「防災・減災は選挙の票につながらないと素人政治家は判断し、今回の大阪都構想における大阪市の区割りや大阪府との役割分担において、防災・減災は全く考慮されていない。河田恵昭 (京都大学・名誉教授) 防災学

「「二重行政解消」を声高に叫ぶことは,市民のくらしをないがしろする維新の政治姿勢を自ら暴露するものに他ならない。危機管理の基本は「ダブルチェック」,東日本大震災の経験から導かれた減災の基本は「多重防御」であることを思い起こして欲しい。」 遠州尋美 (大阪経済大学・教授) 地域政策学

「5つの区への再編というのは市町村合併と同じで、地域自治を破壊し、災害時に大変な困難をもたらすことが、東日本大震災で明らかです。」 塩崎賢明 (立命館大学・教授) 都市計画学

教育・研究論

「大阪都になれば、政令指定都市として有していた独自財源の多くが府=都に吸い上げられる中で、政令指定都市が有していた優秀な教員確保のための採用や研修の権限は喪失し、同時に学校設置運営に関わる学校の条件整備はより劣化し貧弱になっていくことは明確である。」小野田正利 (大阪大学・教授) 教育学

「橋下氏自らが立ち上げた「大阪府「大阪府市新大学構想会議」の「提言」によれば…(中略)…大阪府大及び大阪市大の二つの大学は、教育と地域貢献の二つの面から、公立大学としての役割を立派に発揮してきたことは明らか…(中略)…橋下徹氏の知事当時からの主張である大阪府下にある「府・市公立大学の二重行政」なる批判は、その正反対の評価」(である)小林宏至 (大阪府立大学・名誉教授) 農業経済学

「大阪の教育はこの6年間の誤った教育市政によって,すでに大きく揺らいでいます。…(中略)…学問や教育は効率性だけで語られるものではありません。石上浩美 (大手前大学・准教授) 教育心理学・教師教育学

「大阪に府立大学と市立大学が存在することは決して無駄な重複が温存されているわけではない。…(中略)…府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所も府民、市民の健康と環境を守るためいっそう拡充を図るべきである。これらを浅薄な「効率性」のみを追求して統廃合するなら、府・市民のみならず国民的損失となるだろう。岩本智之 (京都大学・元助手) 気象学

「大阪市は環境分野の専門技術者を育ててきた。大阪市立環境科学研究所もその一つである。これ等の専門家集団は都市環境を守るために大きな役割を果たしている。大阪市の解体は、この専門家集団の解体につながる。いったん解体すると専門家集団の再育成には数十年の年月を要する。」 河野 仁 (兵庫県立大学・名誉教授) 大気環境学・気象学

「大阪市民の健康を守るため…(中略)…大阪市全域を管轄する環境局を存続・強化することが不可欠である。大阪市を特別区に分割することは上記の施策の継続と逆行(する)」 喜多善史 (大阪大学大学院・元助手) 大気環境学

「この大阪のまちで本気になって取り組まなければいけないことは、そのような「いのちのサイクル」を支える営みを豊かにすることであって、それを深く傷つけたり、ましてや破壊することではありません。」住友 剛 (京都精華大学・教授) 教育学

「「本当に強い大學」には市大と府大が共にランキングされている。この活力と研究の場が引き継がれている。…(中略)…大阪の為に共に発展させるべきである。」樋口泰一 (大阪市立大学・名誉教授) 化学

伝統・文化論

(大阪の伝統・文化の実例を列挙した上で)「これらは大阪市の優れた文化的伝統です。大阪市を解体・分割すると言うことは、これらの優れた伝統を断ち切る働きをすると危惧します。」鰺坂 真 (関西大学・名誉教授) 哲学

「大阪都構想」は、図書館、博物館、美術館だけでなく、文楽など伝統文化をふくめ、大阪ばかりか、上方の文化を破壊する危険性をはらんでいます。日本文化、伝統文化を守る立場から、「大阪都構想」に対して重大な疑義があると考えます。」 奥野卓司 (関西学院大学・教授・大学図書館長) メディア表象論

「いまの大阪に必要なことは、住民同士が互いに親しみや誇りを持てる地域を基盤に、長い時間をかけてこそ培われる伝統や文化を生かし、それを地域経済の礎とできるようなまちづくりであり、それは大阪市の廃止ではないでしょう。」菊本 舞 (岐阜経済大学・准教授) 地域経済論

「1925年、大阪市は面積を3倍に拡大する市域拡張を行いました。対象となった地域には、大量の農地が含まれていました。…(中略)…このとき形成された大阪市域は、現在のそれとほぼ一致しています。100年近くにわたり営々と築かれてきた大阪市の財産を解体することに、どのような意味があるのか、大阪市民の皆さんがよく吟味され、賢明な判断をされることを期待します。川瀬光義 (京都府立大学・教授) 財政学

大阪が目指すべきは,「大阪」という文化のもとで,大阪に暮らす人々にとって誇りが持てる「大阪」であり,それは「東京化」を進めることによってもたらされるものではない高橋 勉 (岐阜経済大学・教授) 経済学

「自治体は区域と住民そして自治体政府だけで成り立っているわけではない。その地で起きた歴史的事件やできごとの記憶が紡ぐ「わがまち」への想いがあって、その存在の重さと現実感がある。…(中略)…いまその「大阪市」を市民の投票で廃止することは、私には、人々の記憶や「大阪」の歴史的存在をも消し去ろうとしているように思えてならない。辻山幸宣 (中央大学・元教授) 行政学

「大阪市は戦前の関一市長の為政はじめ、先駆的な施策の伝統をもっている。また新憲法下では市長と市議会の選挙をくり返し、市民の願いを積みあげてきた歴史がある。それを崩そうとするねらいが、露骨に見えるのが今回の「構想」だ。中林 浩 (神戸松蔭女子学院大学・教授) 都市計画学

大阪市民が、歴史と文化、伝統ある大都市自治体を失う痛手ははかりしれなく大きい。」 広川禎秀 (大阪市立大学・名誉教授) 日本近現代史

『都構想』は大阪の歴史、伝統、文化等をも破壊する内容を含んでいます。」 和田 武 (立命館大学・元教授) 環境学