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大阪維新騒動は「文化」の点からも事後検証が必要です。

都市には,都市のレベル「都市格」というものがあります.それについて,考古学の山田邦和教授がご自身の著書を引用しつつ、次のように指摘しておられます。

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・・・(大阪にとって)なによりも必要なのは、「都市格」です。都市の格が上がれば、自然と人々は集まり、結果として経済効果もあがります。これについて、前に書いたものを引用しておきましょう(山田邦和『日本中世の首都と王権都市』〈文理閣、2012年〉346頁)。

「最近、「都市格」というものが論じられることがある。現在の京都は、必ずしも実力の上では日本を代表する都市ではない。(中略)しかし、それでも「都市格」を考えた場合、京都はいまだに世界的に日本を代表する都市のひとつである。(中略)これは、やはりなんといっても歴史的に見て京都が高い「都市格」を維持してきたからである。たとえば、大阪は明らかに日本を代表する都市力を持つ都市のひとつである。しかし大阪の「都市格」は、必ずしもその実力に見合うだけのものとはみなされていない。

大阪からはそうした現状に対する悔しさが聞こえてくる。大阪の人々は、大阪がそれにふさわしい「都市格」を持つようになることを熱望しているのである。大阪はかつて「下衆<げす>の町」と罵られたことがある。大阪はあれだけの都市としての実力をもちながら、文化的には下衆の町であると言われてきたのである。しかしその後の大阪は、そう言われたことを逆にバネとしていろいろな文化的事業を推し進め、今ではそうした悪評を払拭するにいたっている。大阪は単なる経済力だけの都市ではないんだ、格の高い都市なのだということを実証するために、大阪の政財界はいろんな施策を進めてきているのである。大阪の政財界は、明らかに都市開発を推し進める側に立っている。その開発側が、自らの都市を「文化都市」にすることを熱望し、それを通じて大阪の誇りを取り戻そうとしているのである」。

しかし….

「二〇〇八年に大阪府知事に就任した橋下徹は、大阪府の財政再建と行政改革を旗印に掲げ、文化施設や文化関係団体への予算を大幅に削減するという政策を推し進めた。さらに二〇一一年には橋下は大阪市長に転じ、府知事には橋下の側近である松井一郎が就任した。大阪はこれまで営々と築いてきた「文化都市」の蓄積を放棄し、新たな「下衆の町」へ回帰することを選択したといわざるをえない」

(橋下氏は、文化を敵視し、弾圧に余念がありませんでした。文楽にたずさわる人々を「既得権者」として圧迫し、「文楽やクラシックが芸術だというのならばストリップも芸術で、おんなじだ」「能や狂言が好きな人は変質者」と公言してはばかりませんでしたから)。
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……大阪の維新騒動には、徹底的な事後検証が必要です。こうした文化の点からの検証も、強く求められています。

以上,ご紹介まで.